すべては人間の為に存在するという人へ


平静16年3月22日号

 中国や香港、ベトナム等で昨年の春に猛威をふるった「SARS」がやっと鎮静化して安心した矢先、今度はコイヘルペスウイルスの発生によって霞ヶ浦の鯉が全滅するという大きな事件が発生しました。そして 秋には米国産の牛がBSE(狂牛病)に罹っている事が判明し、米国産の牛肉が全面的に輸入禁止となり、庶民の味だった牛丼が各チェーン店から消えて仕舞いました。
 さらに年が明けると、日本でも79年ぶりに鳥インフルエンザが発生し、何十万羽というニワトリが生きたまま処分されるという大事件となり、その鳥インフルエンザがカラスにまで感染していることも判り、とても他人事ではなくなりました。又ある情報によると豚コレラが発生したとも報じられています。
 色々な感染症が鯉や、牛、ニワトリ、豚と次々に襲い日本の食卓は大打撃を受けています。何故このように感染症が牙をむいて我々に襲いかかって来るのでしょうか?
 今回のように次から次へと襲ってくる感染症は、環境破壊など傲慢な人間中心主義に対する大自然からの警告のような気がしています。我々人間に今求められているのは、大自然に対する謙虚な生き方だと思うのですが。



 本来回遊魚であるアジやサバは、大海を回遊しながら成長しますが、中には岩礁の周りに漂って成長する「地つき」と呼ばれるアジやサバもいます。中でも豊後水道で捕れるサバやアジは身が締まっていて特に美味しく、これから8月頃までがシーズンになるそうです。
 豊後水道のサバやアジが、九州の大分県佐賀関に水揚げされたものを関サバ・関アジと呼ばれます。もともと大衆魚であるサバやアジが、関サバ・関アジのブランド名が付くと関東では1kg=1万5千円〜2万円もする高級魚になって仕舞います。
 ところが同じ豊後水道で捕れたサバやアジでも、佐賀関港と反対側の愛媛県三崎港に水揚げされてしまうと岬(花)サバ・岬(花)アジと呼ばれ、全く同じサバやアジなのに不思議な事に値段もすっかり安くなってしまうというのです。



 実は同じような話が仏教にもあります。それは中国の盤山宝積禅師がまだ若い修行時代、ある肉屋の店先を托鉢で通りかかった時のお話しです。
 豚肉を買いに来た一人の客人が、肉屋のおやじに「すまんが店主、私に豚肉の上等なところを1kgばかり売ってくれないか」と言うのでした。すると、その肉屋のおやじは何を思ったか手にした肉切り包丁を放り投げ、腕を組んで
「お客さん!わしの店の肉はどれも皆上等で、上等でない肉など、わしの所では一つも売っておりませんぜ『那箇か是れ不精底』」と怒りだしたのでした。今日お肉屋さんの事を『精肉店』と呼んでいますがそれは、その店では精選された上等の肉しか扱っていないという意味なんです。
 勿論これは肉屋のおやじが自分の商売品を自慢して言ったのですが、宝積禅師はこの肉屋のおやじと客人とのやり取りを聞いて『この世に存在するすべての物は真実で、何に一つ我々人間が文句を付ける筋合いのものでない』という事に気が付いたのです。



 豚肉は解体されるとロース、ヒレ、肩ロース、モモ、バラ、ウデ、スネ等の部位に、また牛肉ならもっと複雑に、サーロイン、リブロース、ヒレ、肩ロース、ランプ、ウチモモ、シンタマ、外もも、肩バラ、ウデ、バラ、スネ、テール等の部位にばらされます。そして我々人間は好みによって、値段のランク付けをして仕舞うのでした。
 この頂き物である肉をランクづけする資格が我々に本当にあるのか?彼の肉屋であれば『お客さん!わしの所の肉はどれも皆上等ですぜ。お客さんはいったいどの肉にケチをつけようて言うのかい』と叱られるのがオチです。
 この不景気でも「飽食の時代」は夢醒めず、既に何年も経ちました。ある統計によると、日本の食糧の60%は輸入に頼っており、生ゴミの40%は食べ残しだとも言われています。もういい加減にしたらと思います。
 この肉屋のおやじのように持っていた包丁を投げ出し、我々に『イノチある頂き物に対し、お前さんは文句を言う筋合いがあるのか、そろそろいい加減にしろよ!』と、人間のワガママ根性を叱ってくれる人はいないのでしょうか?


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