平成12年10月14日号
 インドのヴィデーハ国の王妃は、六つの牙を持つ白象の夢を見た。王妃は、その白象の牙をぜひ自分のものにしたいと思い、王にその牙を手に入れたいと願った。王妃を愛する王は、この無理な願いを退ける事ができず、このような象を知る者があれば届け出よ、と賞金をつけて国中に『お触れ』を出した。
 ヒマラヤの山奥に、この六つの牙を持つ白象がいた。この象は菩薩の修行をしていたのであるが、かつてひとりの猟師を危難から救ってやったことがあった。ところがこの猟師は、ようやく国に帰る事が出来たのにもかかわらず、この『お触れ』を見て、賞金に眠がくらみ、恩を忘れて、六牙の象を殺そうと山へ向かって行った。猟師はこの象が仏様を深く敬い、菩薩の修行をしている事を知っていたので、象を安心させるためにお袈裟をかけて象に近づき、象が心を許しているのを見すまして毒矢を放った。
 激しい毒矢に射られて死期の近いことを知った白象は、猟師に向かって『私はあなたの為に我が身を投げ出したのではなく、仏様から伝えられたそのお袈裟に対して身を投げ出したのだ』と言った。そしてその罪をとがめようともせず、かえって猟師をその四つの足の間に入れて、報復しようとする大勢の仲間の象から守り、さらに、猟師がこの危険をおかすに至った理由を尋ね、彼がこの六つの牙を求めるためであることを知ると、自ら牙を大木に打ちつけて折り、彼にこれを与えた。白象は『私はこの布施行によって、仏道修行を成就し、仏の国に生まれるであろう。やがて仏と成ったら、まず、あなたの心の中にある貪り・瞋(いかり)・愚かさという三つの毒矢を抜き去るであろう』と誓った。

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